く〜の懺悔長

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...... 2019年02月17日 の日記 ......
■ 残された人の悲しみ   [ NO. 2019021701-1 ]
転職する時に、
担当していた利用者さんを、出来ればそのまま
今の職場に連れて来たかったんですが、
当然それは許されないことだし、
部長からは「全員置いていくように」と言われました。

ただ、
明らかに引き継いだ人が迷惑するような問題ケースや、
ずっと担当してほしいと言ってくれた方のみ数名、
所属長の許可をもらって連れて来ました。

本当はもっと、
ケアマネを変えないでほしいと言ってくれた方も居たし、
心配で心配で、続けてお世話したいと思う方も居ましたが、

円満退職のため、泣く泣く置いて来ました。

中でも精神不安定で、
心のケアが必要だった女性は、
担当して日も浅かったため、
連れて行きたいと言うにはおこがましくて、

ごめんなさいね、
でも次の担当もとてもいい人だから。

と言って、源くんに引き継ぎましたか、
源くんのポジティブシンキングな言葉掛けに
不安を感じていました。

この人は前向きな言葉より、
共感して一緒に解決策を考えてあげないと…

そして案の定、
先日、精神科に入院したと、デイの職員さんから聞きました。

まぁね。
私が担当していてもそうなったかもですが。
ただ、もっと力になってあげれば良かったと悔やんでいます。


置いて来た利用者さんの中に、
とても思い入れの強かった男性が居ました。


勉強熱心で、
ご自分の病気の事で疑問に思うことがあれば、
次から次へと私に質問して来て、
まだケアマネになりたてだった私は、
必死に勉強して資料をかき集め、
市や県に掛け合うこともあったし、
本当に大変な思いをしました。

几帳面でとても真面目で、
でもユーモアがあって、
訪問の時は奥様と3人でおしゃべりして笑うのが
とても楽しみでした。

病状も重く、
その分関わりも多かったので、
この方のお世話はずっと自分がしたいと、
誰よりも強く思っていましたが、
好奇心も人一倍強い方だったので、
きっとケアマネが変わる事にも興味を持ってくれるだろうと思い、
後ろ髪を引かれる思いで引き継ぎました。

そんな心配な方でしたが、
まさか担当でもないのに訪問するわけにもいかないので、
半年も経って落ち着いた頃、
せめて年賀状でご挨拶を、と思っていたのに、
兄が亡くなったことでそれも出来ず、

毎年恒例の、バレンタインのチョコを持って、
お元気ですかー?
とお顔だけ見に行ってみようかなー
と考えたりしていたのですが。

市の広報紙の慶弔欄に、
その方の名前を見付けて
頭を金づちで叩かれた様なショックを受けました。

担当した利用者さんが亡くなるのは悲しい事ですが、
わりと精神的には平気なほうだと思います、私。

でも、この方に関しては、
居ても立ってもいられず、
一昨日、お焼香に行って来ました。

半年ぶりにお会いした奥様はやせ細り、
そんな奥様の姿と、遺影とを見て
涙をこぼさずにはいられませんでした。

病気の影響で飲み込みが悪く、食が細くなって、
時々体調管理のため入退院を繰り返している方でしたが、
一ヶ月前も、いつもの様に入院となり、

その入院した夜に、
嘔吐物を詰まらせて急死したとの事でした。


いつもの様に病院へ連れて行き、
淡々と入院前の検査を終え、
病室に送り届けて、
インフル感染防止のため面会制限もあり、
せわしなく帰宅して、
あぁ今夜からしばらくはぐっすり寝られると、
ゆっくりお風呂に入り、眠りについたところに
病院から電話。

到着した時には既に亡くなっていて、

いくら思い返しても、
あれが最期だったんだと思えるようなエピソードが見当たらない、
最期の会話が何だったのかも覚えていないほどいつも通りだったと、
奥様は亡くなったことが信じられない様子でした。

歩行介助、食事の世話、排せつ、服薬、
病院の付き添い、リハビリの立ち合い、
入院時の頻繁なお見舞い…

とても大変なご主人の介護を
飄々と完璧にされている奥様でしたが、
完璧主義のご主人に無茶な要求をされた時、
思い余って私が奥様をかばい、
「今回は我慢して下さい!」
と言ってしまったことがありました。

結局、私が帰ったあとで奥様が叱られ、
その要求は通ってしまったのですが、
お力になれずすみません…とお詫びしたら、
奥様は電話の向こうで「ありがとうね」と言って泣いていました。

いつもすごく大変で、
頼れるご親戚や知人もひとりもおらず、
とっても辛かった介護生活だったでしょう。
でも、文句ひとつ言わず、
常に寄り添い、明るく接していました。

最期に感謝の言葉のひとつも欲しかったでしょうが。

きっと死ぬ時ってみんなこんな風にあっけないのかもね…
と笑った顔はとても寂しく、
これからどうやって生きていくんだろうと、
そればかりが気がかりです。


担当した利用者さんの死には幾度となく遭遇して来ましたが、
なぜこの方だけは駆け付けようって思ったのか、
自分にもよくわかりませんでした。

ご本人にも思い入れはあったものの、
真意はきっと、
この奥様が心配だったのかも知れません。

人が亡くなった時に何が悲しいかと言えば、

その方が生前にどんな生き方をして来たか、
辛い一生だったり、
悲惨な最期だったりすると
その無念を思って涙が出ます。

もうひとつは、残された人の悲しみ。

その気持ちに寄り添いたくて涙をこぼすのだと思います。

今回は、一緒に頑張って来た奥様を労いたくて、
その悲しみに少しでも寄り添いたくて、
足が向いたのでしょう、きっと。

仏壇に、
お香典と、ラッピングしたチョコレートをお供えしまた。
奥様は笑っていました。
毎年プレゼントしていた小さなチョコに、
その方は3月14日には大きなお返しをくれたものでした。

仏間のとなりの部屋から、
ガタン…と物音がしました。

まだ居るんですね、ここに。
亡くなったことを理解していますか?
奥様に感謝の言葉を伝えられず、
さぞや悔やんでいる事でしょう。

ご冥福をお祈りいたします。
一人ぼっちになった奥様を、
どうぞ見守ってあげて下さい。
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